痔ろうをどうするかに関しては数ヶ月K先生と話し合いました。痛みと不快感はあるもののすぐに処置をしなければならない訳ではありませんし。
私は現在のように便漏れが一生続くようであれば、永久人口肛門も厭わない覚悟でした。あの大腸全摘出手術の折の2ヶ月のストマ生活は、大変ではありましたが十数年排便で苦労してきた身には、排便を気にしなくていいという何物にも代えがたいような爽快さがありましたし、ましてやこの便漏れが続く限り痔ろうは何度も再発するでしょう。それに対してK先生は永久人口肛門には大反対でした。
せっかく11時間もの大手術に耐えて繋げた肛門を、まだ若いのにそんなに簡単に諦めていいのか、人口肛門の生活というのはそれほど容易いものではない、必ず後悔があるだろう。というのがK先生の主張です。
それでも痔ろうをそのままに放って置くわけには行かず、K先生と私とで妥協的な方針がまとまってきました。
手術はM病院では無く、ベテラン専門医のいる肛門科病院で行なう(K先生が紹介状を書いてくれる)。それに先立ちM病院で一時人口肛門造設手術を行なう。痔ろうが完治した上で今後、ストマを戻すかどうかは決める。という方向です。
何しろ痔ろう治療が排便を止めないとまた一回目の手術のように失敗しかねません。排便を一時的にストップするには一時ストマが最適ですし、私もストマ生活に希望を持っているので、妥協案としては満足できるものです。
しかし、私としては再び肛門に繋げたとしても、この水便が現在より改善する見込みが無いことも予想していましたし、再び肛門周囲膿瘍を起こして痔ろう化という可能性も高いと考えていました。それならここで永久人口肛門にすれば何度も腹を開けるような大きな手術をしなくて済むと言う心残りがありました。
もうひとつ、痔ろう手術に向けての課題がありました。数年前に軽快者として適用外になった難病医療費助成の再申請です。以前大腸全摘出済みのUC患者は、ほぼ自動的に軽快者に分類されて助成を切られると書きました。ただし、大きな合併症が無い限りです。その大きな合併症が今の状態で、再び人口肛門にしようとしているのですから、再申請の大きなチャンスだと考えました。しかし、可能性は半々ではないかと思っていました。
助成を切られていても、難病登録者のままなので再申請は新規より多少はハードルが低いと聞いています。新規申請と同じように大量の書類が必要ですが、特に現状の診断書(専用の書式があります)はK先生と内容について相談し、出来るだけこの悪化している状況を詳しく書いて欲しいと頼みました。
結果的に目出度く再申請は承認され、再び医療券を手にすることが出来ました。
再申請のメリットは、申請数ヵ月後に承認されたとしても、助成は悪化が始まった時点に遡って出ることです。ですので手術後に適用が始まったとしても、手術費用は助成対象になります。
しかし今回は、ストマ手術に間に合いました。合併症として痔ろう手術も助成対象になったと思います。これで準備は整いました。再び人口肛門との付き合いが、今度は長期に始まります。