大腸全摘出の第一期手術では人工肛門(ストーマ)が造設されます。この手術でのストーマは一時人工肛門といって、腸管の途中で外に排出するように出来ているので、穴が2つあります。胃から便が通って出てくる穴と、肛門に続く穴です。
もちろん私にとって初めてのストマですが、これが結構な頻度でトラブルを引き起こしました。ストマ自体の出来は今思い出してもかなり良い方だったと思います。大きさも手ごろで高さもあり、看護師さんたちも「よく出来たいいストマ」と言っていました。
※人工肛門の英語名はstoma(ストーマ)ですが、日本の病院などで口語的に言う時はストマと伸ばさない事の方が多いです。もちろんどちらでも通じます。
術後一週間経つと食事も始まり便量はかなり増えてきますが、小腸人工肛門(イレオストミー=通称イレオ)の作りたての内は大量の腸液もそれに加えて出てきます。ガスもかなり出ますので、排出や交換が間に合わずパウチの取り付け面から漏れて来るのです。これを通称パンクと言います。
術後一定期間は、ストマからの便量は看護師によって管理されていて、私が勝手に排出できないことになっていました。そしてストマの交換も看護師がやってくれていたのですが、特に術後パウチを使っていた時はその容量の無さからあっという間にパンパンになってしまいます。あれ、お腹が何か濡れてる? と思った時はもう遅く、ベッドは酷い状況になります。何しろイレオの便はほとんど水便なので、看護師はその度にパウチの張替えとベッドの掃除、シーツ交換をやる羽目になります。
多分その頃の病棟もまだUCでのイレオストマの経験がそれほど無く、手探りだったのかと思います。術後パウチの次も低容量のパウチでやはりパンクを繰り返しました。これが多い日は一日に数度発生します。その度にナースコールして処理をしてもらうのですが、その情けなさと申し訳ない気持ちは今でも忘れられません。その度に看護師さんはニコニコとやってきて「仕方ないよー」と笑ってくれるのですが、内心「またかよー」と思っていたでしょう。コロンボ(H病院ではベッドシーツの上に敷く防水シートをそう呼んでます)が敷いてあるならいいのですが、シーツ交換時にそれを忘れていた場合悲惨です。マットまで染みてしまいますから、ベッド交換して翌日看護助手さんが大変な思いをしてマットの掃除をしなければなりません。ストマ患者のベッドにコロンボは必須なのです。
その後、病棟の看護師長がH病院でメインに使っていたストマパウチの会社「コロプラスト」に相談して、イレオ用のパウチにパイプを付けて大容量の外部タンクに流し込むようにしてからは、大分そのパターンのパンクは減りました。先日ストマの再増設手術をH病院で十数年ぶりに行ないましたが、術後最初のパウチ交換でそのパイプで外部タンクに繋げたので、「あー自分のケースが経験則として役に立っているのかなあ」と思いました。
しかし、ストマのパンクの原因は物理的に容量オーバーする事だけではありません。何度もパンクしていると強烈なアルカリ性の腸液に肌負けしてびらんが発生します。その部分の接着が弱くなりそこから漏れることもあります。また、起き上がる時にストマの位置の皮膚に皺が寄る場合もそこから漏れやすいです。
「何で漏るのよ~」と叫びたくなるくらい初期は激しくパンクしていました。術後半月ほど経つと、自分でストマを張り替えるようになり、またコロプラスト営業さんから色々な大容量ストマをサンプルでいただいて試す事により、徐々にパンク頻度は下がっていきましたが、何よりストマ患者が最初に心折れやすくなるのはこのパンクが原因です。
イレオといえど徐々に腸液も減ってきますし、ロペミンなどの薬でコントロールしながらだんだんとパンクしないように管理する事ができます。自分でストマを管理するようになれば、パンクのパターンもだんだん覚えてきて対処できますし、いざパンクした場合の処置も慣れてきますので、それほどこのことを気に病む事も無くなりましたが、やはり最初の内は大変でした。
ストマについては書く事が多いので、そのうちそれだけのページを作りたいと思っています。
※人工肛門(ストマ)の装具(パウチ)は、手術後数日は病院の在庫を使わせてもらえますが、その後は自費で買わねばなりません。これがけっこう値段が張ります。2ピース(お腹に貼る面板と袋が分かれているもの)だと1セット千円ほどしますし、それが持っても2日くらいです。1日2回パンクしてたらもうパウチ代だけで大変なんですよね。自治体に申請する事により補助が出ますが、それまでは結構お金が掛かります。