人口肛門で乗る飛行機の旅

止む終えずなってしまった人口肛門(ストマ)生活、最初は散歩で外出するのも漏れるのが心配でしょうが、慣れてくればなんてこともなくなります。最初は自家用車やタクシーから始まって、電車やバスなんてのはまあ楽勝です。フェリーも乗りましたが、特に問題となるような出来事もなく、普通に乗ってきました。ただ、やはり飛行機ともなると少しハードルが上がります。手術後すぐはちょっと厳しいと思います。最低でも半年はストマの具合を見てからの方がいいと思います。
飛行機の最大の問題は、「行きたい時にトイレに行けない」と言う事に尽きます。出発から離陸後しばらくの間と、着陸前からゲートに着くまでは席を立つ事すら出来ません。それ以外でも気流の悪い時などトイレに行けないシチュエーションがありますし、国際便で食事後等はトイレに並ぶ列もできてしまいます。飛行機に限らず、オストメイトは「乗り物に乗る前にパウチを空にしておく」事が鉄則ですが、飛行機に関してはそれを厳格に守らねばなりません。そしてそれほど溜まってなくとも行ける時にトイレに行ってパウチを常時空に近い状態にしておく事で、パンクの危機に会わずに済みますし、それを守ってさえいれば飛行機の旅も恐れることは何もありません。

パウチは出発前日に貼り替えましょう
一度これで失敗したことがあるのですが、パウチを貼り替えてすぐに外出するのは少々危険です。パウチの粘着面は汗などの水分を吸ってより強固に粘着するので、貼り替え後しばらくはそれほど粘着力が強くないのです。直前に貼り替えた私は家を出て移動中に漏れ出してしまいました。従ってパウチは出発前夜に貼り替えるのが最良だと思います。翌朝にはしっかり面板は固着していますし、もし貼り方に不備があっても一晩置く事でそれを発見でき出発前に補修や貼り替えが出来ますので、移動中に漏れたりするなどの最悪の事態に会わずに済みます。
私は旅行時には特に念入りに面板の縁をメディカルテープで補強しておきます。

搭乗前の飲食は控えめに
特にイレオ(小腸)の人には鉄則です。コロ(大腸)の人でも腸の動きが活発になってガスが出て来やすくなるので、大量の飲食は控えた方がいいです。イレオの私は登場数時間前から食事はやめておきます。水やジュースは飲みますが、腸を刺激するコーヒーも飲みません。目的地に着いてから好きなだけ好きなものを食べるためにもここは我慢しておきましょう。コロの人は洗腸という奥の手があるので、それをやっておけばほぼ一日排便を気にせずに済むというイレオの私には羨ましい方法があります。

搭乗直前に必ずパウチを空に
これは鉄則です。手荷物検査が終わって搭乗ゲートまで来てからパウチを空にします。大して溜まってなくとも空にしましょう。搭乗直前であればあるほど望ましいと思いますが、ゲートオープン直前はトイレも混みますのでそれなりにタイミングを見て行って下さい。その後は数十分から下手をしたら1時間以上、気流が悪かったりしたら目的地に着くまでトイレに行けないかもしれないのですから。

席はトイレに近い席を
「もし席で漏れ始めたら」と考えるとトイレに近い席を選択したいものです。最近はネットで航空券を購入すると予約時に席が選択できますので、通路側の席、トイレに近い席を考えて下さい。知人と数人で旅行する場合は窓側の席でもいいですが、一人旅で漏れ始めたパウチを押さえながら、隣の席の人を跨ぐなんて考えただけで震えてしまいます。
団体ツアーや格安航空便で座席指定できない場合でも出発カウンターでオストメイトだと言えば、満席でなければある程度配慮してくれる可能性があります。

替えのパウチは必ず機内持ち込み手荷物に
これも鉄則です。機内でパンクした時に「替えのパウチが預け荷物に入ってる」なんて想像する事すら恐ろしい状況です。パウチ交換用具一式を機内持ち込みできるバッグに入れておきましょう。ただし、ハサミは機内持ち込み禁止物ですので、自分で面板に穴を開ける人は予め穴を開けて持って行きましょう。また、座席上の荷物入れに入れるよりは前の座席下に置く方が、「漏れたパウチを押さえながら背伸びをして荷物を取り出す」というアクロバットをせずに済みます。ハンドバッグやポーチなど小さな手荷物は前の座席下に置けるのでそこを利用しましょう。私は小型のショルダーポーチに一式入れて持って行っています。

機内の飲食も控えめに
国内線はせいぜい飲み物しか出ませんのでいいんですが(空弁? 着くまで我慢ですよ!)、国際線は機内食が出ます。まあこれも旅の楽しみの一つですので、さすがに食べるなとは言いません。ただビールを飲みすぎて酔っ払ったりはやめましょう。特にイレオの人は水分の取りすぎに注意です。あっという間にパウチが満タン、でもベルトサインでトイレに行けない! なんて事にもなりかねません。

トイレは早め早めに
離陸してベルトサインが消えたらタイミングを見てトイレに行きましょう。便が出なくともガスが溜まりますし、それほど溜まっていなくとも空にして、パウチの状況もチェックしましょう。面板の侵食が進んでいないか、剥がれかけていないか、など、不安があったらメディカルテープなどで補強しておきましょう。不安があるからといって漏れ始めていないのに機内のトイレでのパウチ貼り替えはお勧めしません。狭いし水を大量に使えないので、自宅でやるほどうまく出来るとは思えません。上手くできずに状況をさらに悪くする可能性もあります。どうにか凌いで到着地の空港のオストメイト用トイレで貼り替えた方が安全だと思います。
なお、機内トイレにはウォシュレットは付いてないことが多いので(ビジネスクラスはあったかな?)、以前紹介した手動の簡易ウォシュレット等があると便利です。

降下が始まったらトイレに
よほど気流が悪くなければ、今は着陸直前までベルトサインは付かないことが多いですけど、あまり直前だとトイレが混みますので良いタイミングで行っておきましょう。国際線の場合、到着時の入国審査が終わるまでトイレに行けなかったりするので、ここも余裕を持って行ける時に行っておくのが吉です。

目的地に着いたら好きなだけ好きなものを食べて飲んでください。ただし、帰りの飛行機があることも忘れずに。このルールを守れば、大失敗することなく安全に帰宅できると思います。全ては漏れないためにはどうするか、漏れたらどうするかなのですが、私自身はオストメイトになってから国内線国際線合わせて十数往復乗りましたけど、これまで一度も機内で漏れた事はありません。事前準備と早めのトイレさえ守っていれば何も恐れることは無いと思いますけどね。

一応オストメイトが飛行機に乗るときのTips
1)大抵の航空会社の国内便には障害者料金が設定されています。障害者手帳を持っている方は有効に利用しましょう。
2)ハサミは機内持ち込み禁止のはずです。また液体も駄目なことも多いので気をつけてください。
3)最初に乗る前は旅客機は上空でキャビンの気圧が下がることが心配でした。パウチが膨らんでパンクするのではないかと思ったのです。しかし、実際はそんなに気にすることはありません。まったく無問題です。でもガスは溜めずに早めに出しておきましょう。
4)臭いが気になる方は以前紹介したグッズなどを利用してみては。消臭スプレーは国内線では0.5リットル以下であれば持込可能なようですが、機内で噴射できるかどうかは定かではありません。国際線はちょっと規制が多すぎて機内での利用は無理そうです。
5)手荷物検査ではこれまでストマやパウチ関連品で何か尋ねられたりしたことはありません。健常者の人と同じく普通に何事も無く乗れます。
6)海外空港でもそれは基本的に変わりませんが、ハワイのホノルル空港だけは異常に厳しかったです。もはやゲート式の金属探知機なんて使っていません(置いてはありますが)。一人ずつブース式のエックス線検査機に乗って360度回されて精査されます。私の場合「お腹に変なものがついている」と認められたのでしょう。「こっちへ来い」と検査場内にある個室に連れて行かれ、ズボンを下げろと言われたのでパウチを見せて「I’m a Ostomate」と言ったところ検査官が無線でどこかと喋っています。多分このチェックもカメラでどこからか監視されているのでしょう。無線で二言三言会話してから「OK、行っていいよ」と言われて無事通過出来ました。ホノルルに限らず米国の国際空港はどこも今はこんな感じだとロスやサンフランシスコに行き慣れてる人に言われましたので、オストメイトは米国旅行で経験することと思います。なおその時の同行者(健常者)は首から下げたお守りが引っかかったようで、取り出して中を見せろと言われてました。
7)今はありがたいことに国内の国際空港レベルには大抵オストメイト用トイレが設置してあります。乗る前に排出ついでにパウチの面板の状況をチェックしましょう。ただし、上にも書いたように直前の貼り替えは危険もはらみますので注意して下さい。

以上、何か気が付いた事があれば追記していきます。

投稿者: ibdlife

潰瘍性大腸炎を20代で発病しましたが、既に私も50代。思えば長々とこの病気と付き合ってきたものです。まあ大病しても人生どうにかなるものです。絶望したらそこで終わり、気楽に生きましょう。 人工肛門ですが、旅行好きです。一人でどこへでも行けます。飛行機に乗って海外にも行けますよ!

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