ストーマパウチ雑感

闘病記も一段落してネタも尽きているので、その他の色々な人工肛門(ストマ)関連の小ネタを書いていきます。最初はパウチネタです。

人口肛門(ストマ、ストーマとも言う)は自分がその身になる前は漠然とお腹にプラスチックか何かの「蛇口」でも付くんだろうと思っていました。ところがどっこい。現実はもっとシンプルなものでした。
腸をちょん切ってお腹のところから外に出して縫い付けます。人口肛門とはそれを差します。良く出来たストマの場合、見た目は大きめの梅干そのものです。本当に梅干なので実際に見てびっくりして下さい。梅干の真ん中に穴が空いています。これが腸管そのものです。ちょん切った腸管の端をクルリンとひっくり返してお腹に縫い付けてるので梅干の表面は腸管の粘膜部分です。
大腸や直腸でちょん切るとコロストミー(通称コロ)、小腸部分で切るとイレオストミー(通称イレオ)と呼ばれます。私の場合イレオです。潰瘍性大腸炎で大腸全摘出を経てストマになった場合、ほぼ間違いなくイレオになります。直腸がんなどで肛門機能を失う場合はコロになることがほとんどでしょう。コロの場合、残ってる大腸の長さにもよるでしょうが、肛門から普通に出るような硬い便が出てきます。イレオの場合は大腸で行なわれる水分吸収が期待できないので、間違いなく水便になります。ただ水ならいいんですが、強烈なアルカリ性の消化液を含んでいるので、周りの皮膚がただれて結構厄介なのがイレオです。この他に尿管に造設する「ウロ(人口膀胱)」もありますが、知識も無いので今回は除外。

そのストマですが、そのままだと腸管がむき出して穴が空いてるだけなので、便は垂れ流しです。我慢したり、出にくいものを力を入れて排出させることは出来ません。勝手に出てくるのにお任せです。
便が垂れ流しだと非常に困ります。服は汚れるし臭いはきついし。特にイレオの臭いは非常にきついです。鼻が曲がるような臭いとはこのことだと思いました。
そのために便を受け止めるための「蓄便袋」が必要です。これが「ストマパウチ」です。「判ってる人たち」で話す時はストーマの「装具」とも言います。
昔は本当にただの袋をどうにかしてくくりつけてあるだけで、さぞや取り扱いは大変だったろうと思います。パウチは年々と進歩して、今ではストーマ生活者(オストメイトと言います)が日常生活する上ではさほど困らないレベルまできています。

パウチは世界でも数社しか作っていません。毎日使うものとしては結構高価ですが、自治体の補助が出るのでよっぽど漏れが激しく毎日変えるのでなければ自己負担(基本1割)はそれほど大きくありません。補助は自分で役所に行って申請する必要がありますので、市役所(区役所)の福祉課にでも行って相談しましょう。大体それも含めて病院でアドバイスしてくれると思いますけど。
ストマパウチは一品系(ワンピースタイプ)と二品系(ツーピースタイプ)があります。ワンピースはお腹に貼り付ける面板と袋が一体の物、ツーピースは別々です。価格はワンピースの方が安いのでガンガン取り替える場合はそちらの方がいいでしょうが、ツーピースは袋だけを取り外せるので、ストマの洗浄もできて管理が楽です。私は自宅ではツーピースしか使っていません。
私がこれまで使ったパウチはコロプラスト、コンバテック、アルケアの3社です。病院によってシステムが違うとは思いますが、私が行った病院ではストマ造設の手術をすると、サンプルとして各社のパウチをいくつかずつ貰えます。試してみて自分に合った装具を決めて下さいと言う事です。その3社を試してみて、独断勝手なレビューをしてみます。

コロプラスト

コロプラスト センシュラ2
コロプラスト センシュラ2
コロプラストはセンシュラミオに移行中のようで、もう廃盤になるのかな?
まだあと3セット残ってるけど使う日が来るかどうか・・・。

デンマークにある世界的なストーマ装具の会社です。私の行った病院(3院)ではどこもこれが第1選択でした。なんか看護師さんの信頼度は一番高そうです。
2002年の一時ストマの時はずっとこのメーカーを付けていました。数年前の造設手術と今年の再造設手術でも入院中はこれです。術後パウチから一品系(ワンピース)パウチを経て二品系(ツーピース)のセンシュラ2に落ち着きました。
コロプラストは基本的に自分で穴を切って貼るタイプが主流です。プレカットもありますが、微妙に穴サイズが合わないと余計なびらんが出来たりして厄介です。むしろこの自由度が病院のような万人に合わせる必要があるケースで有利なのかもしれません。
粘着面の品質が良くて皮膚に優しいとWOCナースのUさんの話。看護師としては皮膚が荒れるのが一番嫌だそうです。まあ交換時にいちいちケアをしなくちゃいけなくなるし漏れやすくなりますしねえ。
私としてはそれほど良い印象は無いんです。入院時はずっとこれだったということもあって、パンクはいつもこれな印象なのです。皮膚への粘着面が溶けて尽きると即漏れるというのも私としては怖いです。ツーピースの接合部にはロック機能があるのですが、トイレで前かがみになるとよく外れてました。脱臭フィルターは濡らしても詰まり難いです。でもこれは面板の溶けが早くて4日が限界だったかな。

コンバテック

コンバテック バリケアナチュラシリーズ
コンバテック バリケアナチュラシリーズ
シリーズの仲でも一番良い奴、デュラヘーシブナチュラMCフランジの面板とバリケアナチュラ インビジクローズドレインパウチをずっと使い続けています。高価なのが難点ですが、漏れも予測できますし、私にとって安心感は一番。

アメリカのブリストル・マイヤーズ系列の会社だそうです。サンプルを数種類試した上で、最終的にこれ(デュラヘーシブナチュラMCフランジ+バリケアナチュラインビジクローズドレインパウチ・・・なげえよ)に落ち着いて使い続けています。選択した最大の理由はとにかく長持ちだからです。最近サイトには書かれてないようだけど、最大で7日対応だった筈。私はこれを6日ローテーションで交換しています。また粘着面の外側に余白として布のシール面があるのもポイント高いです。粘着面が溶けて尽きてもまだ布部分で短時間こらえられます。そのギリギリで何度か助かった事があるので、私は一番信頼しています。
また、穴はプレカットのように見えますが、SMLとサイズが3種類あって、取り付け前にぐいぐいと広げてストマより穴を大きくして貼り付けると、後で縮んでストマの「首」をぎゅっと咥えるので水便でも粘着面の方へ行きにくくなっています。これによって持ちが大分違うと思います。
短所は高い事。10セットで17,530円。これを2ヶ月で消費するので補助ギリギリ、パンクさせたり旅行などで通常より早めのサイクルで交換したりすると自己負担分が別途発生します。また粘着性能が異様に高いので、剥がす時に気をつけないと皮膚の方を痛めてしまいかねません。リムーバーは必須です。脱臭フィルターが付いていますが、濡らすとすぐ詰まります。つまりイレオの水便ではフィルターがすぐに駄目になります。ガスの抜けが悪くパンパンになるとパンクしますので注意が必要です。水便にはなりにくいコロの人は関係無いかもしれません。
面板と袋のジョイント部はパコンと溝にはめ込むだけでロック機構もありませんが、これまで取り付けが不完全だった場合を除いてその部分で不具合を起こした事はありません。
今回の手術後、Mフランジ(面板が平面)のLサイズに替えたのですが、それだと漏れが発生したので、以前と同じMCフランジ(面板が凸面)に戻しました。以前は陥没ストマ対策で凸面だったのですが、今回は漏れ対策です。また、ストマがどんどん縮んできたのでサイズもMに戻しました。多分ずっとこれを使い続けると思います。

アルケア
ストーマ界で唯一の国産品です。日本製としての安心感があります。コンバテックのような布テープの余白が付いているタイプもあります。凸面板も選べます。付け心地もいいです。さすが日本製です。WOCナースは研修でアルケアの工場見学をするそうです(Uさんの話)。
選定でコンバテックとこれでずいぶん悩みました。自治体から補助を貰うにはまず業者を決めねばならないのです。最終的にカタログ上の最長の持ちが5日と言う事で、より長いコンバテックを私は選びましたが、アルケアもいいと思いました。
コンバテックのフィルターはすぐに役に立たなくなるので、アルケアの別付けのフィルターは愛用しています。
何年も前に2セット試しただけで、もうサンプルも持って無いので写真は無し。

今ではストーマ造設手術後にWOCナースがパウチの選定について適切にアドバイスしてくれると思います。本当は長期に十分テストしてからメーカーと製品を決めたいところですが、補助を貰うにはまず業者を決めて、そこから見積もりを役所に送ってもらわねばならないため、自費出費を出来るだけ抑えるには急がなければならないという問題があります。業者さんから貰えるサンプルも各社2セットくらいですし、十分に自分に合ったものを選択するには、担当WOCナースの経験を参考にするのもいいのかなと思います。

投稿者: ibdlife

潰瘍性大腸炎を20代で発病しましたが、既に私も50代。思えば長々とこの病気と付き合ってきたものです。まあ大病しても人生どうにかなるものです。絶望したらそこで終わり、気楽に生きましょう。 人工肛門ですが、旅行好きです。一人でどこへでも行けます。飛行機に乗って海外にも行けますよ!

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