白血球除去

治療8年目、21世紀に入ります。プレドニンも大分効果が薄くなってきました。50mg投与すれば出血は止まりますが、緩解期間だ徐々に短くなってきました。すぐに再燃してしまいます。

ある日、診察に行くとO先生から「この病院でも導入したので使ってみませんか」と勧められたのが、当時最新の治療法である白血球除去です。H病院は理事長が消化器医のため、そこらへんの大学病院よりこの手の機材導入が早いです。当時多摩地区では最初に入ったと思います。

私の行なった治療は、今で言うG-CAP(アダカラム)という奴です。白血球の顆粒球を透析で除去するという治療で、完全看護の中一週間ごとに1回、それを5回繰り返してワンクール終了です。(当時の標準的な方法)
最新治療法でもあり、副作用も考えられるため、体調を管理しながら行なわねばなりませんでした。もちろん入院治療です。(今では通院でも出来るようです)
一ヶ月の入院は仕事的にきついのですが、大病という事もあって会社は了承してくれました。

私にとって、初めての潰瘍性大腸炎での入院です。他の病院なら何度も入院してるケースでしょうけど、O先生の私に対する治療はかなり特殊だったと思います。私の仕事面を大きく考慮して下さったと思うので感謝していますが、逆に他の病院でやっているような入院での絶食治療や食事制限をしていればもう少し私の大腸は長持ちしたかな?という気持ちもちらっと今でも頭を掠めます。

H病院にとって初めてのG-CAP運用が私でした。機械もまっさらでピカピカです。その機材は透析室の一角に小部屋を作って置かれていました。
透析室に入る前に、「透析中の人をじろじろ見ないこと」「彼らを“かわいそう”などと軽々しく透析室内で決して言わない事」等注意を受けました。
技師さんもテストは何度もしたでしょうが、初めての運用が私なので慣れてないのは確かでしょう。通常は両手を使って左の静脈から抜いて右の静脈に返すらしいのですが、私はとにかく血管が細くて採血泣かせです。そしてG-CAPに使う針はかなり太くて、それを刺す血管もある程度の太さが必要です。この時も左手で有効な血管が見つからず、結局左は足首の静脈から取るというウルトラCで行う事になりました。

透析は約1時間で終了しますが、針が太いためその間じっと寝ていなければならない事が苦痛です。5分に1回ほど技師さんや看護師さんが見に来て機械がちゃんと動いているか確認します。
トイレ行きたくなったらどうしよう・・・と思ったら、何度目かで本当に我慢できなくなり、一旦針を抜いてトイレに行かせて貰いましたが、次回から紙オムツ着用になってしまいました(笑。
終了すると針を抜きますが、採血針と違って極太なのでなかなか血が止まりません。数分アルコール綿で押さえて止まったと思って立ち上がって歩き出すと、ボタボタと血が落ちてきて慌てて看護師さんが止血という事も数度ありました。

終了後は1日点滴です。病院は何かと点滴しますが、あれは保険点数を稼ぐだけの事が多い気がします。結局ブドウ糖水500ml入れても何の効果があるんだか判りません。もしかしてベッドに患者を縛り付けておくための手なのでしょうか?
副作用として、私は強い頭痛に悩まされました。終了後しばらくすると頭痛が始まり、翌日には消えています。
G-CAPが無い残りの6日間は暇です。一応身体自体は元気なので非常に退屈です。当時、UCが悪化して外で仕事ができなくなった場合の転職を考えて資格の勉強をしていましたが、治療の合間に外出許可を貰って試験を受けに行きました。

入院中、同室のSさんと仲良くなりました。Sさんは隣町のお米屋さんのご主人です。当時60才前後でしょうか?胃がんで胃の大部分を切除していましたが、検査入院との事で割と元気そうに見えました。物静かなのに男気のある方で、私の好きな「大人」でした。奥さんと息子さんが入れ替わり毎日見舞いに来て、私もフルーツなど一杯いただきました。
Sさんの方が一週間早く退院していきました。「後で米送るよ」と言ってました。私も退院して数日、どうしたかなと思っていると、奥さんから私の自宅に電話が。送ってくれる米の件かと思って「その節はお世話になりました」と受けましたが、「今朝主人が旅立ちました」との事。私の退院と入れ替わりに緊急入院したそうです。私は絶句してしまいました。「絶句」の意味を初めて現実的に理解した日でした。今ではもう入院患者のエキスパートと自負していますが、この日以上に悲しかった事はありません。

G-CAPが効いたか効かなかったかというと、なかなか判断が難しいです。何故かと言うと一緒にプレドニンも飲んでいましたので、どちらが作用して緩解に至ったか判りません。ただ、その後の緩解期間が3~4ヶ月しかなかった事を考えると、あまり効果が無かったとも言えます。
この後、L-CAPという別の白血球除去方も出てきましたが、残念ながら受けた事はありません。私は退院後にテレビの潰瘍性大腸炎特集で見た「大腸全摘出手術」に心惹かれていきます。

投稿者: ibdlife

潰瘍性大腸炎を20代で発病しましたが、既に私も50代。思えば長々とこの病気と付き合ってきたものです。まあ大病しても人生どうにかなるものです。絶望したらそこで終わり、気楽に生きましょう。 人工肛門ですが、旅行好きです。一人でどこへでも行けます。飛行機に乗って海外にも行けますよ!

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